【美山かたり】

vol.15

頑張れ!そばの花~秋の深まりとともに新そばの季節~

そばの花が咲けばアユが下がり始める
 清流美山のアユ釣りもシーズン終わりに近づいています。今年は夏の終わりから週末ごとにやってきた台風や大雨で川の水が増水し、濁っているため、落ち鮎になるまえの網入れが出来ないままで、地域のアユ好きはとても残念に思っていることでしょう。落ち鮎とは、アユの習性で産卵のために川を下るアユのこと。そんなアユの動きに合わせるように、美山のそばの花が咲き始めるのです。

そばの花を見たことがありますか?
 一面のそば畑に揺れる可憐で素朴な白い花は、幻想的で、雪のようにたとえられます。茎の先端に白い小さな花が集まって咲き、まるで雪の結晶のようにも見えます。
美山町では、いくつかの地域でそばを栽培していますが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「かやぶきの里」(美山町北)では、例年9月中旬からそばの花の見ごろを迎えます。

かやぶきの里では、平成10年頃から休耕田を利用し、かやぶきの里の風景によく似合う「景観作物」としてそばの栽培を始めたそうです。かやぶき民家をバックに、揺れるそばの白い花は、見る人の心に安らぎを与えてくれる光景です。

 しかし、今夏は暑すぎた異常気象で、苗の育ちが早いところに、台風の直撃を受けたため、花が一斉には咲き揃わず、圃場ごとに花の見頃が異なっている状況です。また、暴風・大雨警報が続いた台風により、咲き始めた花の蕾が落ちてしまい、さらには田んぼに水が入って枯れてしまったものもあります。
残念なことですが、自然の営みには逆らえず、残った花が無事に実を結ぶのを祈るばかりです。

そばの花の不思議

満開を迎えたそばの花は、その後茶色の実を結び、10月末頃に収穫を迎えます。そばの花の受粉は風と虫だけが頼りだそうで、雨の多い年には虫が少なく、実を結ばずに散る花も多いとか。可憐な白い小さな花ですが、その花は見かけによらず「独特の匂い」があるそう。人間には臭いけれど、虫にとっては良い匂いなのか、受粉作業をしてくれるそうです。
今年の花も、頑張って実をつけてほしいものです。

「そばの花写真コンテスト」などイベントも開催中

かやぶきの里では、現在9月30 日(日)までを「そばの花月間」とし、「そばの花写真コンテスト」の写真を募集中です。そばの花とかやぶきの里をテーマにして、写真を撮ってみませんか?
また、そば関係のお土産物の販売(半生そば、そば茶、そばかりんとう、そば茶アイス等)や「お食事処きたむら」の軒先では手打ちそばの実演が予定されています

美山でとれたそばを味わえるのはこちら!
かやぶきの里の「お食事処きたむら」では、美山で栽培したそば粉を使って蕎麦を打っています。こちらのお蕎麦は風味がよく、地元町民にも観光の方にも大人気!地元産の蕎麦への想いを中野邦治店長に伺いました。
中野:「お食事処きたむら」では、従前よりメニューにお蕎麦があり、最初は他地域のそば粉を使用していました。しかしある年、美味しいお蕎麦のお店を紹介してもらって食べにいったところ、その風味と味に感動。そのお店で修業をさせてもらい、蕎麦を打つようになりました。さらに、この地で採れた蕎麦の実、粉で蕎麦を食べてもらいたいとの思いから、現在は、有限会社かやぶきの里として、作付けから管理し、年々作付け面積を増やして今年は約2.2ヘクタールで栽培しています。北地区での栽培だけでは足りず、今では町内の他の地域でも栽培してもらっているんです。」

地域で採れる安心安全なそばで作られる手打ち蕎麦は、お客さんと地域を結ぶ大切な食材。地域の人々が想いを込めて育てています。しかし美山町では御多分にもれず、獣害との闘いがあります。シカにそばの新芽を食べられないよう電気柵などが必要で、かやぶきの里の景観を保ちながらも、獣たちを寄せ付けないための苦労が隠されているのです

新そばの季節 石うす挽きにこだわって大切にする蕎麦の風味

収穫したそばの実は、11月中旬ごろから地区内「お食事処きたむら」で新蕎麦として提供されます。お食事処きたむらでは、「石うす挽き」にこだわっているそうです。「石うすでゆっくり挽くと、熱がこもらないので、風味をこわさず、美味しいそば粉になるのです。特に新蕎麦はみどりがかっていて、新蕎麦ならではの風味、香りがありますから、ぜひ、新蕎麦の季節に来て食べてもらいたいです。」と中野店長さん。

お話を伺うために、ライター下伊豆がお邪魔した時は、ちょうど中野店長さんがそばを打っておられるところでした。こねられたそば粉の塊は、中野さんの手にかかると、のし板の上で、まるで生き物のようにひらひら動き、みるみるうちに広がっていきます。使っておられる麺棒は約120センチ。麺棒いっぱいに広げると、直径120センチ、厚みは1.2ミリになったお蕎麦が、そば切り包丁できれいに切り揃えられました。

目の前の白い花が、獣害にも負けず、台風にも負けず、無事にそば粉になった今年の新蕎麦の季節には、もう一度訪れて、中野さんの手打ち蕎麦を味わいたいと思っています。
美山で新蕎麦を食べられるお店はこちら

お食事処きたむら
ちしゃの木庵
たけよし

 

文:下伊豆 かおり